なんせ30年分!長い。
5月に読み始めて読んでも読んでもページ減らず。
他の本を読みながら読み進めやっと先週読了。
1984年 - 2013年 のエッセイなので、読みながら僕の人生のほとんどの時間の歴史を追体験できる。
基本的には上から目線で批判的な指摘が多い。
俺は他人には興味ないけど、一言だけ言ってやるって喧嘩スタイル。
龍さん、80's 90's 2000's 2010's とグラデーション的に語り口が変わってゆく。
80's は、日本の悪口いって、俺には関係ないけどねじゃーまた!みたいな言い逃げスタイル。天皇制がいかんみたいな話も多い。
90's は、仕事が忙しくなってきて日本の悪口を言うってスタイルは減る。後半になると、オウム事件とかを受けて、子供や若者に道筋を示せない大人達への批判が多くなる。
2000's あたりからは、海外を飛び回るって事が少なくなる。この頃は政治、経済のシステム批判が多い。
2010's に入ると、喧嘩スタイルも落ち着いてくる。批判的ではあるけど。「勘違いしてもらっては困るが、私は~を批判したい訳では無い。~というのは、~と比べて間違っていると論じているのかという事を指摘したいだけだ。」みたいなセリフが多い。
もうやめよう、疲れたみたいなセリフも多く、飽きと、諦めと、もう自分のようなオジサンがごちゃごちゃ言う話しじゃないんだよみたいな違和感を感じさせる。
80's、90's の喧嘩スタイル。
これは時代のせいもあるんでしょうね。
的を射た批判的な指摘をかますと、頭がいい、鋭い!と一目置かれるような時代。
ニュースステーションとかが全盛だった頃の久米宏調を考えても、そういうのがカッコいい時代なんでしょうね。
龍さんの小説は、僕がずっと若いころに「限りなく透明に近いブルー」を読んだだけ。
殆ど内容は覚えていないけど、面白い!とは思わなかったですね。
村上春樹の方が面白いって思ってた記憶はあります。
今読むと、そこは逆転するのかもしれない。
実際、本書を読むまで、村上龍がこんなに沢山小説書いているの知らなかったし、小説どころかエッセイに、テレビ司会に、キューバのバンドを招致したり、映画撮ったりと、もの凄い仕事量をこなしてた人だったんだと初めて知りました。
歳を負うごとに全然面白くない小説を書く村上春樹とは対象的なのかもしれない。
常に書くという事をやめなかったプロと、左団扇で気が向いた時に書くプロ。
岡田斗司夫さんの言う、才能=好きで継続できる力 て言うのは、なるほどなと思う。
この本を機会に、小説の方も何冊か購入したので、本書のKindleUnlimited読み放題開放作戦は見事に成功なんだけど、出版社が分散している関係なのか、読みたいなと思った小説が結構Kindle化してなくて、なにやってんだよ勿体ないと思いました。
結構いい言葉が沢山紡いであったんですけど、なんせ本が長すぎて、その都度メモでも取らないと忘れちゃいますね。
ひとつ凄いなと思ったのが、上から目線で批判的指摘を投げつけるスタイルなんだけど、終盤の60歳になった頃でも、老害が何言ってんだよみたいな感じにならないのは流石に凄いです。
年取るごとに的に当たる精度が上がっている感じさえする。
時代にキャッチアップする意欲のたまものというか、龍さんが本書で良く語る、危機感を持ているのか?という問いを実践しているからだと思う。
反発買いそうな喧嘩スタイルを続けて行くと、時代と言説がずれてきちゃったときに、浦島老人の戯言になりがち。
そうならないところは、時代をちゃんと観察して面白い小説を書く努力というか、浦島にならない為の危機感を持ち続けているからなんでしょう。
喧嘩スタイルのこの書き方も、多分テクニックなんでしょうね。
どうやったら人の心に刺さるかを計算しているからこういう書き方な気がする。
カンブリア宮殿の時の龍さんとかはこんなにキツくないし、本書でも、カンブリア宮殿は批判は封印して、出演して貰う経営者に気持ちよく語ってもらって情報を引き出したいと語っているので、色々なポジションで攻めも守りもできるみたいな器用な人なんだと思う。
初期の頃は本当に鼻につく書き方です。
大槻ケンジも、なに偉そうにスカしてるんだ!て憤るぐらい。
そういうのに我慢ならない人は言葉が入ってこないでしょうからお勧めしません。
個人的には楽しく読めました。
Kindle Unlimitedで史上最高に読書が手軽になっている時代だと思います。
そして、読書は読むから聴く時代ですよ!
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この方法もいいですし、Audioブックもプロ俳優さんの読み上げでなかなかいいですよ。
Kindle Unlimitedまたセールやってますね。