知られざる女たちのシベリア抑留記。
過酷過ぎる運命に読んでて何度も涙が出た。
小柳ちひろ『女たちのシベリア抑留』https://t.co/WDIbcJ5rnL 従軍看護婦をはじめとして、1000人ちかい女性たちがシベリアで抑留生活を送っていたことは、迂闊ながらこの本を読むまで知りませんでした。ドキュメンタリー番組のディレクターによる長期取材の成果です。
— 橘 玲 (@ak_tch) 2020年5月12日
人権は安定と平和のなかでしか守られない。
それをひしと感じる文章でした。
いざとなれば政府や国際世論など守ってはくれません。
そんな状況をサバイブしてきた女たち。
最初の主人公は陸軍病院の従軍看護師達。
日本軍司令部からの通達は、ソ連兵が現れたら抵抗することなく酒と女を差し出す事。
現地の士官達はこれに憤り女たちを守る行動をとる。
夜になると病院に女を物色しにくるソ連兵。
女たちはスクラムを組んで仲間たちを守る。
病院を脱出して逃避行の行軍中、仲間の看護婦の1人がソ連兵にさらわれて惨殺されてしまう。
他にも、満州から逃避する際、子供達を自らの手で殺した母親達の話が泣けてしょうがなかった。
母親達は気が狂ったように我が子を刺したり首を絞めたりして殺した。
自分の運命を悟った子供など「お母さん苦しくないように殺して」と懇願する。
後に、我に返った人の中には辛さに耐えかねて自ら命を絶つ人も多かったという。
そしてソ連はなぜ、捕虜を連行して強制労働を強いたのか今でも研究がされているらしい。女までもなぜ連行したのかという事も調査は続いている。
それが政策だったのか、スターリンの支持だったのか。
シベリアへ連行された後の彼女達は強くたくましかった。
看護師という手に職が彼女達を助けた。
日本の医師とソ連の医師とでの情報交換もあったそうだ。
医療というプロジェクトと向き合ったときに、日本人、ソ連人という垣根はない。
あるのはプロとして自分がベストを尽くせるのかという意識だけ。
連行されて、医療チームとして懸命に働いていた頃の記憶はつらいものではないんですね。
赤化した仲間との対立のエピソードも興味深かった。
後半は別の主人公。
樺太でソ連へのテロを企てた疑いでシベリアへ抑留された日本人女性の話。
ドイツ、ポーランド、ソ連、朝鮮などから集められた女囚達の様子が描写されている。
収容所の中は本当に過酷な状況だったようだ。
この人はソ連に残り、アーリャという名前で日本へ帰国することなく住み続ける。
つい、数十年前にこんな非人間的な災厄に、日本人が巻き込まれていたという事実。
そして、いま、ウイグルでも同じことが行われている可能性がある。
国際世論は黙っていないというのはあてにできない。
憲法9条だけでも我々を守ってくれない。
本質的には軍事力という実力だけが国民の安全と生命を守れる唯一の力なんだと思います。
最後に、これらのインタビューに答えて下さった方たちは、辛いおもいを沢山しているにも関わらず、人生を前に進ませている。
辛いだけではなかったエピソードも語っている。
それは後の戦友会の存在が大きかったという話しが印象的でした。
同じようにつらい体験を共有する仲間と語らう事で、悲劇の中に埋もれた楽しい思い出を掘り起こし、少しずつ消化して飲み込んでいった。
中には辛過ぎて戦友会にも出てこれない仲間もいたが、そいう者は辛い思い出を辛いままに抱え生涯を生きていったという話し。
色々学ぶところが多い文章でした。
こちらはKindleUnlimitedではありません。
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