僕もあなたも本質的には痴漢予備軍です!
読み終えた後、認めたくないけどそうだなと思った。
色んな環境条件で、犯行という発症していないだけで、殆どの男は痴漢キャリアである。
著者は、12年間の性犯罪更生プログラムを実施する精神保健福祉士・社会福祉士。
その経験とデーターから、痴漢をする人間の心理や、関わる家族の心理、再犯の実態を語る。
痴漢になる人の痴漢を生みだす要因は、これと言って説明できるものは無いという。
世間で真面目で通っていて、家でも働くし、子煩悩でいいお父さんという人も多い。
非モテの人が手を染める犯罪でもない。
暗い生育環境がある人もいれば、そうでない人もいるので、著者の印象では育てられ方みたいなのは大きな因子ではない。
ただ、仕事別で観るといわゆるサラリーマンは多い。
痴漢という犯罪の多くが満員電車で発生してて、犯行のハードルが低いのが理由。
痴漢をしちゃう種類の人がいる訳では無く、ストレスのはけ口としての一つ、痴漢行為。
ストレス解消に、度を過ぎた深酒や、暴飲暴食、性風俗店通い、ギャンブル狂いなどに陥ってしまう人と本質的には変わらない。
ただ、非合法かつ、被害者が甚大なダメージを受けてしまい人生を台無しにしてしまうような方法の一つなので、それじゃー仕方ないですねでは済まない。
実例として挙がっていたのは、満員電車でたまたま手が女性のお尻や胸に触れてしまった。故意ではは無かったが咎められなかった成功体験から次第に故意に触るようになり、やめられなくなってしまった人。
目の前で、女性のスカートの中に手を入れて痴漢行為する犯行現場を目撃してしまったが、女性がなにも訴えずに電車を降りて行ったのを見て、女性も実は嫌がらない人もいるんだという認知の歪みが発生してはじまった人。
そして依存症になると、こんなことはやめなければならないと頭でわかっていても、これが最後の1回と警察に逮捕されるまでやめることができなくなる。
メカニズムとしては、ダイエットが維持できない、お酒やたばこ、SNSが辞められないのと同じ。
2010年の大都市に住む、通勤通学で電車を利用している女性の過去1年間に痴漢被害にあった率は13.7%
そのうち9割が被害届を出していないそうです。
理由はどうせ捕まえられない、仕事や学校に行かねば、セカンドレイプが怖い、逮捕になっても裁判面倒など色々。
この痴漢犯にとっての成功体験が、次の連続犯行に繋がっている事実は押さえたい。
施設に来る人の話だと、最初の犯行から逮捕されるまでは大体みんな数年や10年。
その間に犯した件数は数え切れず。
それぐらい逮捕されるのは氷山の一角で発覚しにくい犯罪でいろんな意味で質が悪い。
被害者は受け入れがたいだろうけど、性犯罪者の多くが加害の記憶を放棄しやすい。
言い換えると忘れてしまうという。
いじめ加害者がが、いじめたつもりはないけどや、大げさ、そんな事したっけと忘却しやすいのと同じ仕組み。
残念だけど、人間は、自分と家族など極親しい関係の人間の事しか考えられない性質なのだ。
どんなに量刑を重くしたり厳罰化したりしても、再犯を減らすことには繋がらない事をデーターが示している。
それどころか、厳罰をにすればするほど、反省を促せば促す程、加害者が社会的孤立を深めたり、逆恨み感情を強めたりで再犯率が上がる。
後半は、治療による性犯罪依存症を回復する効果。
著者のクリニックでは3年間しっかりプログラムを継続できた人の再犯率はゼロの実績。
グループトークと教育と、必要者には薬事療法と。
根気強く続けると、ゆがんだ認知が矯正されてゆく。
読んでいると矯正というか洗脳するという感じに近いのかも。
痴漢をやめるというより、やめ続けるイメージ。誘惑に手を出しそうになるのはなかなか治せないが、その時ブレーキになるのが、信頼している家族だったり施設の仲間だったり。
せっかく再犯が収まっていても、離婚をきっかけにまた犯してしまう例もある。
人の縁が切れて孤立無援になった人間は弱いのだ。
社会が痴漢を犯した人をどう扱ってゆくかが今後発生自体を減らせるかどうかの鍵。
特殊な迷惑な人としてではなく、被害者や社会への影響の大きい依存症を患った人と捉える必要がある。
勿論病気だから許しましょうねではない。
許してはいけないけど、認知の歪みの矯正に成功しない限りは、本当の反省は生まれない。
具体的には、痴漢あかん、痴漢ダメ絶対 の内容のポスターから、痴漢は依存症です、治療をすれば治せますというポスターに張り替えたり、鉄道各社、社内放送で痴漢は依存症で心の病気だとアナウンスする。
痴漢被害にあってますボタンを車内の各所に取り付ける。
(僕はこれは女性がつねに防犯ブザーをすぐならせる状態で持ち歩く啓蒙活動か、スマホの物理ボタン連続3回押し+長押しとかのアクションで社内で痴漢が発生しているというランプがつくとかのアプリ開発がいいかなと。)
趣旨は被害を泣き寝入りしない環境づくり、犯行のハードルを上げる事が大事。
最後に、加害者家族会の話。
ほぼ、すべての男が痴漢キャリアであるとう事を踏まえ、自分の旦那、父親、兄弟、息子が加害者になる可能性をリアルに想像して、加害者を社会でどう扱うかを考える必要がある。
特殊なモンスターの認識だと、死刑、無期長期、去勢とかの極論になっちゃう。
それが自分の家族でもそれでいいですかっていうのを真面目に考えた方が生産的ですね。
痴漢について色々認識を改めるきっかけになった本でした。
他にもこの本の内容で書きたい感想沢山あるんですけど、まだまだ文章が長くなるので読んでみて下さい。
男も女も読んだ方がいい。
本は読むじゃなくて、聴く時代です!
手軽なのはAmazon オーディオブックかもしれません。